セイコー プレサージュ SARX019 メカニカル プレステージモデル
今年になってから購入した現行モデルで、セイコーの機械式腕時計。

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Presage は、予感、胸騒ぎ、とか言う意味。

琺瑯(ほうろう)ダイヤルを採用した希少なモデル。その日の気温や湿度を考慮して、色ムラなく平滑に焼成できるのは熟練職人のみだそうで、100年経っても色褪せないらしい。まぁ100年も経てば他が駄目になるので、色褪せについてはあまり意味のないことだろう。

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実物は機械式であることからケースが厚く、風防もドーム型で厚みが感じられ、琺瑯の文字盤が独特な趣を醸し出しており、シンプルだが価格相応の高級感はあるが割高だと思う。

リーフ型の青い針や乳白色の文字盤にローマ数字はアンティークな感じがする。
厳密に言えば、Antique/アンティークと言うより、Vintage/ヴィンテージ 、しかし古い物ではないので、懐古趣味的であることから Retro/レトロな時計と表現するのが的を得ているかもしれない。

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琺瑯(ほうろう)とは、鉄やアルミなどの金属を下地にして、その上にガラス質のうわぐすりを高温で焼きつけたもの。最も多く利用されているのは鉄ほうろうで、これは強いけれどサビという大敵のある鉄と、美しいけれどすぐ壊れすいガラスを結合させたもの。鉄はガラスによってサビが防げ、ガラスは鉄によって強さを与えられた。

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ケースや文字盤のデザインのシンプルさは逆に新鮮な印象を受ける。
この時計の気に入った点は、琺瑯の文字盤以外にも、端正なケースの形、ローマ数字、カーブサファイアガラス、リーフ型で青色の長短針、終端が輪っかの欠けたデザインのカウンターウエイト部分が長めの秒針、バックスケルトン、耐磁であること、そして何より日本が誇るセイコー製であること。

ベルトは高級な本クロコダイルの革で黒に近い紺色、Dバックルになっている。現在オリジナルのベルトは保管し、黒色のコードバン(馬革)に変更している。コードバンは牛革より強い皮革で光沢があり、汚れや傷に強い。独特の硬質な素材感があるが、なめらかでしっとりとした質感が特徴である。

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上はオリジナルのクロコダイル革ベルトで、下はコードバン。

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駆動方式はメカニカル自動巻でキャリバーNo 6R15、SEIKO製のムーブメントなので安心・・・?
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パワーリザーブは50時間もあるので優秀。
ただ、このムーブメント(6R15)は日差の微調整が難しく、+数秒で安定させるのが難しい。
仕様によると日差は+25秒~-15秒となっている。
このムーブメントは姿勢差が顕著で、平置きでは日差+-0秒で安定させることができるが、腕に着けて日中過ごすと夜には10秒以上遅れてしまう。平置きで日差+10~15秒程度に調整しておくと良いだろう。所有するスイスETA社のムーブメントは、平置きでも着用でも姿勢差が無く+-0秒前後で安定させることができるが、セイコーは不安定で調整が難しい。

歩度調整方法
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Aを緩急針、Bをヒゲ持ち、Cをテンプと呼ぶ。
進む時計を遅らせるためには、AをBに近づけ、遅れる時計を進ませるためには、AをBから遠ざければ良い。
この作業はAを動かすことによって行う。

機械式時計が進んだり遅れたりする上に、メンテ費用がかかり不便だから、クォーツ式時計が開発された。
機械式時計は手がかかるが、多少の不便を楽しむというもの、その魅力の一つなのかもしれない。

青い針は、えもいわれぬ趣があり、白文字盤に良く似合う。
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青焼き針ではないが、鏡のように磨き上げ、表面をパラジウムで整えた後、藍色の塗料で仕上げされている。

個人的に白文字盤のローマンインデックスに青針の組み合わせは惹かれるものがあり、しかも白文字盤が琺瑯である。しかし琺瑯である必要もないと思うし、琺瑯であることを知らない人が見たら、白文字盤に院でエックスがプリントされた安物見見えなくもない。

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最近は大きい腕時計が流行で、SARX019 も比較的文字盤が大きくケースも厚い。クロノグラフの時計は別として、3針式はもう少し小さくても良いのだが、着用していると丁度良い大きさに思えたりもする。

カウンターウエイトが長く、その終端が三日月形の秒針がいい。

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ムーブメントの精度に不満があり、高級感にも欠けるが、近年のSEIKOの中では悪くない時計だと思う。

サイズ(縦×横×厚) 約48×40×13mm
ベルト幅 約18-20mm
重さ 約86g
最大巻上時:約50時間
振動数:6振動/秒
石数:23石



手間をかけて作られる琺瑯ダイアル
半永久的に色あせない琺瑯(ほうろう)ダイヤルは、日本に一人だけの匠の技を持つ横澤満氏のハンドメイドによって製作されている。セイコーはなぜ今、琺瑯に拘って時計を作ったのか。それは大正2年に同社が発売した国産初の腕時計「ローレル」がきっかけとなる。同じく琺瑯素材を使用して作られた〝元祖〟は現在、セイコーミュージアム(東京・東向島)に展示されているが、100年が経った今でも美しい乳白色の表情を保ち続けている。そこで腕時計製作から100周年を迎えるにあたり、原点ともいえる「ローレル」の意匠、理念に改めて光りを当て、当時の精神を現代の技術とデザインで再構築したものがこのプレサージュ。セイコーにとって拘りのある価値ある時計だ。

文字盤(ダイアル)の下地を工場で作ってから梅澤氏の元に送られる。脱脂してから、酸洗、ニッケル処理、中和処理の工程を経て、ガラスとホーロー釉薬を作る。文字盤にうわぐすりを塗布し、乾燥させてから炉で焼く。
焼く工程で、うわぐすりのガラス質が溶け、琺瑯独特の乳白色の美しいダイアルができる。その日の気温や 湿度を考慮して、色ムラなく平滑に焼成できるのは熟練職人のみと言う。

琺瑯職人の横澤満氏は40年以上、琺瑯に携わり続けているベテラン職人で、塗布面の厚さ、わずか0.01ミリ刻みの仕上がりを見抜く眼力を持つ匠。腕時計に使われているダイヤルは、3センチ程度と小さく、厚みなどにも制限がある。繊細に造り込まれるダイヤルに琺瑯を施すことができる、日本で唯一の職人らしい。

職人の技術と経験を必要とし、手間ひまがかかる上、製造難易度の高さから(世界でも)ほとんど使われていないこだわりの琺瑯ダイアルは、平均して1日に7枚程度しか生産できないという。

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シンプルな中にも、時計好きの心を擽る意匠を凝らしたデザインだと思う。
国産の腕時計で、このような洗練されたデザインのものは意外と少ない。
国産の腕時計は、文字盤や針が下手にゴテゴテしていたり、ケースの形状が微妙に美しくないものが多く、特にシチズンは昔からセンスのない残念なデザインのものばかりで今も変わっていない。セイコーも安価なものは美しくないデザインが大半だが、シチズンと違い非常に良いデザインのものが数は少ないが存在する。

白文字盤には革ベルトが似合う?
文字盤の色は白か黒が好きで、その他の色はあまり好きではない。メタルブレスの黒文字盤は引き締まって精悍な感じがするが、メタルブレスに白文字盤だとフェイスがややぼけて見える印象がある。黒文字盤はメタルでも革でも似合うと思うが、白文字盤は黒や茶の革ベルトとのコントラストが格好いいと感じる。

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【追記】
修理
記事で日差が安定しないムーブメントと書いたが、実は何度も日差を調整する内に、弄り壊していた。
日差の調整は緩急針を動かすことでするのだが、このムーブは慎重にしないとヒゲゼンマイに触れてしまいやすい。ヒゲゼンマイはとても繊細な部品で少しでも変形すると精度が狂ってしまう。
ヒゲゼンマイは機械式時計の最も重要な基幹部品である。
ヒゲゼンマイの調整・交換はさすがに自分では無理なので、セイコーオンライン修理を利用した。

状況を逐一メールで報告してくれるなど対応は抜群に良かったし、メールでの質問に対するレスポンスも早い。
因みに、保証書があったので、作業料や部品代は無料で、返送の送料も無料であった。
下の一番上に受付から発送までの日付が記されているが、要した日数は約10日。
セイコーのアフターサービスは完璧だなと感じた。

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OH後、戻ってきたものを確認すると、日差1秒強と素晴しい精度で稼働している。半日平置、半日着用での日差だが、仕様の日差は+25秒~-15秒内なので、1秒強という日差は素晴しいの一言。
その後、自分で調整して日差+1秒以内で稼動している。
上でムーブメントに不安があると書いたが、修理後は調子が良いので、案外良いムーブメントなのかもしれない。

精密機械である時計、特に機械式時計は衝撃に弱く、絶対に落としたりしないように気を付ける必要がある。

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【追記】
プレザージュのシリーズに、ダイヤルに日本の伝統工芸である漆塗りを用いたモデルが、2015年2月14日より発売された。

SARX029 価格:110,000円+税
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黒色が美しく、10回もの印刷を重ねてつくり上げる立体的なローマ数字が、SARX019 より良くなった点。
とてもかっこいい時計だが、個人的には琺瑯の白文字盤に青い針の SARX019 の方が好みに思う。
元々セイコーのプレサージュは変なデザインが多かったが、最近はなかなか魅力的な腕時計が揃うシリーズとなった。しかし、購入を検討している人は、良く考えたほうがいい。所詮、プレサージュでしかない時計である。

【追記2】
日本未発売の製品で似た製品を見付けた。
セイコー SRP767K1
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セイコー SRP769K2
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針など共通でよく似ていて、共に Amazon で2万円前後で購入できる。
ムーブが 格下の 4R35 であるのと琺瑯でないだけで随分と安価になっている。
SARX019 の 6R15 も使い捨てムーブメントで一生物とは言えず、上記の姉妹製品の価格を鑑みると、SARX019 も琺瑯の文字盤以外は大した腕時計ではないことがよく分かる。

まとめ:白文字盤に球面サファイア、青針など好きな人は、それなりに満足できると製品であろう。
買いかどうか?と問われたら微妙である。琺瑯、琺瑯、と言うが、実物は琺瑯が特に美しく見えるわけではないし、琺瑯なんて全く必要がないと思うので、個人的には琺瑯に惑わされて買ったことを少し後悔している。
良い時計だとは思うが、価格程の価値はないと結論する。